青ひげの花嫁


My late wifes

1946


ストーリー;
舞台は戦後のイギリス。ロージャー・ビューリーという名の殺人鬼のエピソードから話は始まる。彼は大変に魅力があって、身よりのない小金持ちの娘を夢中にならせ、短い結婚生活の後に殺害している。これをどうやら4度繰り返した最後の犯行を、タイピスト嬢に目撃されてしまった。
だがこれでも彼は発見できない。発見したとしても逮捕できない。妻たちを殺したに違いないのに死体を消し去ってしまっているからである。
それから11年、ビューリーの犯罪を取り上げた脚本が、一人の俳優に届けられた。そしてその脚本には当事者しか知りようがない詳細までも書きこまれていた!
探偵役はヘンリー・メリヴェ―ル卿だが、この作品内の彼は物凄く笑わせるキャラクターに仕上っています(笑)

◆「顔中に砂がくっついてたんだ。砂がさ!誰かが彼女を捕まえて首を絞め、それから顔を砂の中に押し込んで窒息させたんだ。口にも鼻にも目にも砂が入ってる。たまったもんじゃないよ。」

◆友達をどこまで信じるか
演劇仲間のブルースとベリルが、よりによって殺人犯の手記めいた劇を実地で演じてみようと言い出す。ブルースは地方では俳優として顔が知られていないから好都合。しかし、急ぎアメリカでの仕事から戻ったベリルは、ブルースの演技は過剰ではないかと不安になっていく。
脚本にはなかった詳細のそのまた詳細をなぜか知っていて口を滑らせるブルース。また、本気じゃないという割に土地の娘と駆け落ちを企んでいるブルース。
大体、H・Mが仄めかすように、彼の名前をさかさにすると、ビューリーと同じイニシャルになるではないか。
彼がロージャー・ビューリーなのか、殺された女たちはどこから出てくるのか。謎が最後の最後までわからずハラハラし通し。文句なく面白かった。

--2004.July.ハヤカワ文庫