乱(リア王)
監督:黒澤明
これは好きでないですが一般的にKing Learに数えられているので言及。
リア王の、人間性や愛情の読み違えの悲劇よりは、戦国の世の中を治めていた武将が、それがいかに危うい均衡であったか考えもせずに、猛獣のような悪意と野心を野に放った、という展開。でもかといって日本らしさがあるわけでなく見ていて居心地が悪かった。しかもピーターの道化は使いこなされてなくてかえって邪魔だった。


蜘蛛の巣城(マクベス) 
監督:黒澤明 出演:三船敏郎、山田五十鈴
きちんと『マクベス』している映画です。セリフは完全に違っちゃっているけどね。
戦国時代にマクベスの背景はとてもあうのだと思う。マクベス=三船敏郎の住む城も、いつも寒寒としてスコットランドぽいといえなくもないし、魔女とのやりとりもじくじくした日本ならではの湿度が生かされて不気味で良いよ。
最後の死に方はなんかいまいちだった。「打って来い、マクダフ、先に待てといったほうが地獄落ちだ」というキメセリフは欲しい。マクダフと真剣試合でもさせれば渋かったろうに。

ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ(ハムレット)
監督:トム・ストッパード
原作戯曲もこのトム・ストッパード。映画自体は、個人的に怖かった。例の「タイタス」でも、大道芸みたいな人形劇ワゴンがやってきて、そこから○○を出すという衝撃的なシーンがあるのですが、人のいない森の中で、ロズギルはまさにそんな人形劇ワゴン(ほかに言い方ないのか)に遭遇するのです。
その後もなんだか成り行きまかせで意味もわからずいろんなことに巻き込まれる。そして最後は――タイトルにモドル。

女帝エンペラー(ハムレット) 
出演:チャン・ツィイー
原案ハムレットと大きく予告で出たのでDVDを狙っていた映画。しかしスクリーンで見たほうがよかったかも、という大掛かりな演出です。ワイヤーアクションはすごく変で、「反逆者」の老家臣を撲殺の刑にするところなどは長々と棒で殴りつけて残酷だった。しかしそんな場面を見ながら命乞いできてもしない王妃ワン(チャン・ツィイー)の冷酷さ。彼女は王妃だけど継母なので若いし、そもそも皇太子(つまりハムレット)の恋人であったらしい。オフィーリアのポジションの子がまた気が強く、王妃にまともにたてついて鞭打ちにされてもまだ懲りない。
原作から比べれば全然セリフが違うけれども、大真面目なハムレット翻案映画と思う。イングランドに送るところなんかをうまく内陸の雪国に置き換えていたりでそこそこ楽しめたしね。ただしヒロインが目立ちすぎ。これを見ると弱き者は女じゃないな……。

ローマン・エンパイア(アントニーとクレオパトラ)
出演:ピーター・オトゥール
皇帝アウグストゥスが死にのぞんで自分のたどった人生を振りかえる地味な映画。BBCの教養番組ぽいですが悪くはないと思います。 出てくるローマの先輩たち、ライバルたちを乗り越えたり倒したりして皇帝になったアウグストゥス。アントニーは先輩でありよきライバルでもあったけれど、対立してしまったのは、エジプトの、ヒステリックで野心家な美人のせいだった…。
アウグストゥスって要領が良くて、口八丁なイメージがあるんだけど、この映画では共感するところが多かった。演じるP.オトゥールがよい人ではないかとなぜか思った。     


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